濁った水対策のためのフィルターテストの結果が出たので報告します。2サンプルしかやっておりませんが、面白い結果になりました。
写真のように直径47mmのフィルター用のハウジングといつも使っているステリベクス(ポアサイズ0.22um)を直結してろ過します。
まずは田んぼの水をサンプルとし、47mmのフィルターのポアサイズを変えることによって、ステリベクスでどの程度ろ過量を増やせるかを試してみました。このテストでは47mmフィルターとステリベクスを直結せずに、一度47mmフィルターでろ過した水を回収し、その水をさらにステリベクスでろ過しました。47mmフィルターは25-27um(定性ろ紙)、2.7um(GF/D)、1.2(GF/C)の3種類をテストしました。結果としてはGF/Cが一番良かったです(定性ろ紙はスカスカな感じでした)。
GF/C+ステリベクスの組み合わせがよいということが分かったので、写真の直結システムで植物プランクトンが沢山混入してステリベクスでは1Lろ過するのが難しかった水をろ過しました→サクサクろ過できました。せっかくなので、GF/Cとステリベクス独立してDNAを抽出して魚類メタバーコーディングのデータを取得しました。
【結果】
サンプルー1
抽出したDNAはステリベクスの方がGF/Cの3倍くらいありました。しかしPCRの結果はGF/Fで良好な増幅が得られ、電気泳動チェックの結果もMiFishのピークのみでした。一方ステリベクスはわずかに増幅されたものの、電気泳動チェックの結果はバクテリア由来の非特異的ピークのみでした。このサンプルはステリベクスのみでろ過したシーケンスデータを取得していたので、その結果と比較すると出現魚種はほぼ同じでした。今回のステリベクスのサンプルもシーケンスしたのですが、バクテリアのデータしか得られませんでした。一方GF/Cのデータではバクテリアのデータはわずかでした。一方で以前のステリベクスのみの結果ではバクテリアのデータもそれなりに得られていました。このサンプルの結果では、GF/Cで魚類のDNAが入っている粒子が捕捉され、バクテリアは通過してステリベクスで捕捉されていることが推測されます。
サンプル-2
抽出したDNAはステリベクスの方がGF/Cの2倍くらいありました。PCRの結果は両方ともわずかに増幅されました(ステリベクスの方が少し増幅は高かったです)。電気泳動チェックの結果はGF/FでMiFishのピークのみが観測され、ステリベクスではMiFishとバクテリアの両方のピークが観測されました。こちらは以前のシーケンスのデータはないサンプルです。結果としては、GF/Cの方がたくさんの魚種が出現しました。ステリベクスの方で2種類のみでした。しかし、1種類はGF/Cで一番リード数が多かった魚種だったものの、もう1種はGF/Cでは出現していなかった種でした。
まとめ
サンプル数が少ないので定量的なことは論じられませんですが、GF/Cは効率的に魚類DNAを含んだ粒子を捕捉することができ、逆にバクテリアを通過させることで抽出したDNAにおける魚類DNAの存在割合を高めることができるものの(弊社従来方法との比較)、魚類DNAを含んだ粒子の中にはGF/Cを通過するものもある。
【今後について】
機材コストが高いこと、47mmフィルター用のハウジングとステリベクスの接続部分の強化対策をもう少ししなければならないこと、コストを含めた運用面を詰めなければならないため、この直結システムの運用を全体化するかどうかはまだ未定です。ただ、明らかにステリベクス単独でのろ過ではろ過量を稼げないサンプルについては導入を開始しております。