環境DNA解析に使用するフィルターについて

環境DNAの解析では水サンプルからDNAを回収するのにフィルターろ過で行います。

弊社はこれまでポアサイズ0.7umのGF/Fというフィルターを使ってきたのですが、現在ポアサイズ0.2umのステリべクスというフィルターへの変更進めております。話によると、研究者の間では河川/湖沼のサンプル→GF/F、海→ステリべクスというようなすみ分けがあるようです。

そこで両者にどのような違いがあるかをここ1ヶ月の間比較テストを行ってきました。結論から言いますと、検出される魚種という観点からは両者に違いはほとんどありませんでした。GF/Fの方がポアサイズが大きいので、解析対象となるDNAがすり抜けてしまうのでは?っという点についても検証しました。具体的には、GF/Fでろ過した水をさらにステリべクスでろ過して、そこからDNAを回収し、次世代シーケンサーで解析しました。その結果ステリべクスで回収した分からもかなりのDNAが抽出できたものの、そのDNAの大半はバクテリア由来であることが解析結果から判断できました。魚のDNAもわずかながら検出されましたが、GF/Fで抽出したサンプルの解析結果で得られた魚種であり、魚種数は大幅に少ない結果となりました。

しかしながら、材質と構造の違いによるフィルターとしての能力の違いと、そこから目詰まりの原因が何であるかをつかむことができました。

目詰まりの原因は大きく分けて二つに分けられます。

(1)ピコプランクトンによるもの(わかりやすく言うと藻が発生した状態です)

(2)砂泥によるもの

つまり生物的なものか物理的なものかということです。気温が高い夏に行ったということもありますが、原因の大半はピコプランクトンに起因するものでした。そして、ピコプランクトンによる目詰まりにはGF/Fの方が強いとういことがわかりました。これは上記の河川/湖沼のサンプル→GF/F、海→ステリべクスというすみ分けを支持する結果です。逆に砂泥については粘土質のようなピコプランクトンレベルの粒径の場合を除いて、ステリべクスの方が強いということがわかりました。ステリべクスで砂泥による濁りが強い水をろ過している時に観察していると、比較的大きな粒子はフィルター上に付着しているだけで、揺らすと動きました。

ステリべクスでのろ過に関してはフィルターを直接操作する必要がなく、コンタミネーションのリスクが低かったり、加圧タイプなのでろ過後の水を連続的に排出可能なので、詰まりさえなければ手間なくろ過量を増やせるなどメリットが多いです。

今回の検証結果から、今後弊社ではステリべクスでのろ過を基本とし、ピコプランクトン由来の濁りが強い場合はGF/Fを使用するというサンプルによる使い分けですることにしました。