戦い

本日から新年度になりました。昨年度も多数のご依頼をいただき、いろいろなサンプルで経験を積ませていただきました。本年度もよろしくお願いします。

環境サンプルはPCR阻害物質との戦いであることを痛感した一年でした。今回はPCR阻害物質対策について少しお話しします。

水や土壌といった環境中には腐食物質が含まれていることが知られており、腐食物質学会なるものも存在することを最近知りました。この腐食物質が環境サンプルから抽出したDNA中に含まれるPCR阻害物質の主な構成要因のようです。このような状況から弊社では去年の8月くらいからPCR阻害物質を除去するカラムを導入しており、その効果も確認しています。ZymoResearch社の製品です。しかしながら結構なお値段しますし、サンプルによってはカラム処理しても、なお阻害効果が発揮されているようなケースがたまにあります。

いろいろと調べていくうちにPVPP(ポリビニルポリピロリドン)という物質を知りました(実は以前もその効果を知らずに使っていたことが判明しました)。新しい技術ではなく、PCR阻害物質除去対策としては古典的なもののようです。そもそもビールやジュースの製造過程でポリフェノールを除去することを目的として工業利用されている添加物質でした。

実際使ってみると効果が確認されました。定量的にものが言えるほどデータの蓄積はありませんが土壌サンプルを使ったテスト結果から、PCR阻害物質除去能力としては、磁気ビーズ精製>ZymoResearchのカラム>PVPPという感じでした(量の問題を無視しているのでかなり大雑把な感じです)。PVPPの一番のメリットは上記のように工業利用されていることからコストが非常に安いということです。また、水に溶解しないことから添加後に容易に分離できることで作業が簡素化できることです。一番簡単は方法は10%のPVPP懸濁液をDNA溶液に等量混合したのちに遠心するだけです(上清回収)。この3つに方法をサンプルによって組み合わせて、どんなサンプルでもPCRで増幅できるようにいろいろと仕込んでいく予定です。

もう少しノウハウがたまったら整理してあらためてご連絡します。弊社はDNA解析を身近な技術にしたいと考えているので、皆さんが使えそうな技術に関しては積極的に情報発信してきます。