マメ知識

PacBio新ワークフローを再評価(PCR酵素編)

使用するDNAポリメラーゼによって、1.4倍くらいDNA長に差が出ます

2025年3月、PacBio社より微量DNAからライブラリを構築する新しいワークフローが発表されました。
このワークフローではDNAポリメラーゼにKOD FX(TOYOBO)が採用されています。

弊社のこれまでの経験から、KOD FXよりもゲノムDNAの増幅に適したポリメラーゼがあるかもしれない!ということで、新ワークフローに対し、GC含有率の異なる3種のサンプルと7種のポリメラーゼを用いて独自に比較実験を行ってみました。

比較実験の結果、ポリメラーゼの種類によって得られたリードの平均長やN50に差がみられました。
KOD FXはこのワークフローに適したポリメラーゼであることが確認できましたが、それを上回るツワモノポリメラーゼが見つかりました!

●性能の高い順
5番 > 2番 > 4番 > 1番(KOD FX) > 3番 > 7番 > 6番
●PCRの反応時間
2番 < 7番 < 6番 < 5番 < 1番(KOD FX) = 3番 = 4番

最も性能が高かったのは「5番」のポリメラーゼでしたが、「2番」も平均長やN50の点でわずか3%程度の差にとどまり、非常に優れた結果を示しました。さらに、PCRにかかる時間は「5番」が90分であるのに対し、「2番」は35分と非常に短い時間で増幅できました。PCRの反応時間はライブラリ調製のコストに直結する重要な要素のため、リーズナブルな解析サービスをモットーとする弊社としては、「2番(KOD One)」を用いたワークフローを弊社の標準として採用することといたしました。

 

実験の詳細

ampli-fi samples 図1. 比較実験に用いた3種類のゲノムDNA
GC%が異なる3サンプルを用いました(Kikurage(GC%:57)、Chicken(GC%:42)、Clam(GC%:32))。約10 Kbの断片を検証用に用いています。

 

LibQC図2. PacBio社のRevioでシーケンシングした結果
得られたリードの割合(縦軸 %)とリード長(横軸 bp)の関係です。
サンプル名末尾の番号は使用したDNAポリメラーゼの種類を示しています。

 

LibQC
表1. PCRの反応時間と得られたリードの平均長・N50・≧5000 bpの割合の比較
PCR反応時間はコストに直結する重要な要素であり、リード長(平均長やN50)はゲノムアセンブリの品質や効率に影響する重要な指標です。本表では、これら4項目を用いてポリメラーゼごとの性能を比較しています。比較の結果、ポリメラーゼの種類により、反応時間、得られるリードの平均長およびN50に明確な差異が認められました。

遺伝子解析サービスについて

BSL2サンプルの受け入れについて

DDBJへの登録について

新しい試み